投資信託の買い時と売り時(タイミング)はトレンドを把握して判断する

公開日 2018年7月29日
更新日 2020年1月31日
売買のイメージ

投資信託を買おうと思った時、「今買って、すぐに下がったらどうしよう」「本当に今は買い時なのか」と誰しも悩むはずです。
この記事では投資信託の買い時と売り時(タイミング)捉え方について説明します。

といっても、市場の動きを完璧に予測できる人はいないので、一番安い時に買って一番高い時に売るみたいなことは不可能でしょう。
しかし、「さすがに今は売らない方が良いだろう」「今買うのは明らかにリスクが高い」といった、誰が見ても売買すべきでないタイミングが存在します。

この記事ではそういったタイミングをチャートによるトレンド把握によって判断する方法を説明します。

何故売買のタイミングが大切なのか

まず、この記事の導入として、何故売買のタイミングが大切であるのかを説明します。
知っている人には当たり前のことですので、読み飛ばして頂いて構いません。

一言でいうと、 タイミングによって利益・損失が大きく変わるからです。
ここで、実際の投資信託のデータを用いて実例で確認してみましょう。

理想の売買タイミング

どこで買い、どこで売るのが理想なのかを説明します。
当たり前のことですが、実際の数値を見ると理解もしやすいので確認していきましょう。

ニッセイ日経225インデックスファンド 基準価額推移

上のグラフはニッセイ日経225インデックスファンドという投資信託の基準価額推移(チャート)です。
ガクッと値動きしている部分はリーマンショックが起きた頃です。なんだかんだで10年ほど前になりますが、まだ記憶に新しいでしょう。

投資信託の利益は基本的には買ったときの基準価額と売った時の基準価額の差額です。
Aポイントの最も安いときに投資信託を買い、Bポイントの最も高いときに売るのが理想です。

もし、この理想通りに売買出来ていれば、Aポイント→Bポイントで基準価額が約3.6倍になっているので、投資資産も3.6倍になるでしょう。
利回りで計算すると年約15%で運用出来たことになります。これは非常に好成績です。まさに理想的な売買でしょう。

最悪の売買タイミング

ニッセイ日経225インデックスファンド 基準価額推移

一方、リーマンショックが来ることを知らず、まだまだ伸びると踏んで高値であるCで購入していたらどうでしょう。
一年後には資産が半分になります。不況と騒がれている世の中ですので、底値が分からずDで売ってしまうと最悪です。投資資金は0.4倍になります。

たとえ、Cで買ってもいずれ景気が回復するので待てば挽回できるチャンスはあります。
ただ、Cと同じ基準価額まで上がってくるには5年ほどかかっています。果たしてそこまで待ちきれるのでしょうか。

以上より、売買のタイミングによって利益・損失が大きく変わります。
売買のタイミングが大切であることはご理解いただけたと思います。

積立投資+トレンド把握でタイミングを判定

チャートイメージ

さて、それではどうやって理想のタイミングを掴むかですが、はっきりいって理想のタイミングでの売買は不可能でしょう。
情報量が桁違いのプロの投資家でも市場の予測は難しいとされているので、素人の我々は予測出来ないです。

そのため、毎月少しずつ投資する積立投資とチャートによるトレンド把握をおすすめしています。
この方法なら理想の売買からは遠いですが、世の中の市場の流れにあやかって少し良い思いをするぐらいの売買なら可能です。

それでは、「積立投資」と「チャートによるトレンド把握」について説明します。

基本は積立投資でリスク回避

プロでない我々は最悪のタイミングでの売買は避けために、積立投資という毎月少しずつ投資信託を買うことでリスクを分散させます。
言い換えれば、高い時も安い時も満遍なく購入することで、平均的な基準価額で購入することが狙いであり、さらにドルコスト平均法を利用して積立投資は購入平均単価を安全に低めに抑えることが可能になります。

ドルコスト平均法の例

ドル・コスト平均法とは定額で継続的に購入することにより、平均取得単価を下げる方法です。理屈は簡単で、定額定期購入なら基準価額が「安いとき→多くの口数」「高いとき→少しの口数」で購入するので、1口あたりの単価で見ると平均より安くなるためです。
上の図は5万円分の投資信託を定期的に購入したものを表した図で、折れ線は1口あたりの単価、棒グラフは購入口数を表します。 平均単価は100円になることに対し、平均購入単価は88円と平均単価より低い単価で購入出来たことになります。

プロでない我々は積立投資が基本です。まずそこをきちんと理解しておいてください。
積立投資の詳細は別の記事で紹介していますので、ご覧ください。

トレンドの把握とは

ベースは積立投資で良いのですが、それでも明らかに良い時期、悪い時期は把握して売買したいですよね。
そのトレンド(傾向や流行)を日経平均株価やTOPIXのような指標や基準価額などの値動きを分析して把握が可能です。

値動きをグラフにしたものをチャートと言いますが、チャートの情報だけを頼りに分析します。
これをテクニカル分析といい、情報に差が無い分、プロもプロ以外も同条件で分析可能です。

この方法のメリットは、チャートを見て事実を把握するので、予測や思惑が一切入っていません
これは精神的に楽です。どうしようっかなぁって悩む必要はありません。

そこで、これ以降はテクニカル分析によるトレンド把握について具体的に説明します。
ただし、あくまで投資信託用の考え方で株とは少し異なるのでご注意ください。

テクニカル分析によるトレンド把握

株価の動きを見て、上がるのか下がるのか傾向(トレンド)を判断するだけです。流行を掴むとも言えるでしょうか。
テクニカル分析とは書きましたが、ここで紹介するのは非常に簡単で、機械的に出来ることですので、ぜひご参考ください。

チャートの見方

まずは、チャートという株価の動きをグラフにしたものの見方を簡単に紹介します。

日経平均株価2016年 週足

上のグラフは日経平均株価のチャートです。黒塗りと白塗りの帯のようなものが日経平均株価を表しており、直線は13週移動平均線を示しています。
この帯のようなものは「ローソク足」と呼ばれており、下記の図の通り、始値(はじめね)、終値(おわりね)、安値(やすね)、高値(たかね)を表現できます。

ローソク足の見方

13週移動平均線とは過去の13週の平均値をプロットして線で繋げたものです。他にも26週移動平均線や25日移動平均線など種類は沢山あります。
13週間の平均となるため、日々のちょっとした値動きや数日間だけの大きな値動きなどは反映されません。
また、見たらわかる通り、実際の値動きよりも変化が遅いです。
つまり、13週移動平均線は直近の値動きに惑わされず、中期視点での傾向を見るのに適しています。

よって、株価と移動平均線を両方見ながらトレンドを掴みます。

トレンドと売買の判定方法

株価と移動平均線を両方見ながらトレンドを掴み、売買の判定をします。ずばり結論を言うと、下記のように判定します。

チャートトレンド

①移動平均線上昇中+移動平均線より株価が上(株価上昇中)なら上昇トレンド→買い
②移動平均線下降中+移動平均線より株価が下(株価下降中)なら下降トレンド→待ち?or売る?
③移動平均線下降中+移動平均線より株価が上(株価上昇中)なら上昇トレンド転換?→買い
④移動平均線上昇中+移動平均線より株価が下(株価下降中)なら下降トレンド転換?→待ちor売る?

図を見ればすぐ理解できるでしょう。ざっくり言えば、株価と移動平均線の傾向が一致していたら上昇or下降トレンドと判断するということです。
実際は上記4つにあてはまらない微妙時も多いですが、その時は全て買いの判定です。
ベースは積立投資ですので、明らかにタイミングが悪いときでなければ買うというスタンスです。

そういった意味で、待ちと書いているのはこれから下降トレンドに入る、下降トレンドが続くと見られる時だけです。
買ってすぐに損失を出すタイミングでわざわざ買わなくても良いでしょう。
ただし、いつ上昇傾向に変わるか分からないので、緩やかな下降なら買っておいて構いません。
また、下降傾向が長く続き、価額が低いときはどんどん買いましょう。

売りのことも書きましたが、基本は買いか待ちです。売りはさすがに売らないと大きな損失が出るので、仕方なく売る時のタイミングと考えてください。
最悪、売るタイミングを逃しても、価額はいずれ上がってくるので、待てば良いです(下記景気サイクル参照)。

ところで、投資を止めて現金化したいときは、当然ながら売りのタイミングで売るのがよいタイミングにはなります。
しかし、タイミングを計るといつまでも現金化出来なくなることもあるので、利益が出ていて現金化する必要があるのであればいつでも現金化してよいと考えましょう。

繰り返しになりますが、積立投資をしてるだけで、価額変動リスクはかなり下げることが可能ですので、少し価額が安いときに多目に買えたらラッキーの気持ちでいいでしょう。
安く買って高く売るのを狙うのはプロでない我々投資家には難しいのですから。

実例で検証

過去のデータを用いて、上記の方法で投資をするとどうなるか検証します。
2016年と2017年とリーマンショック前後を対象にします。

投資先は国内株式インデックスファンドのニッセイ日経225インデックス投資信託です。
日経平均株価と連動して基準価額が動くので、見るチャートは日経平均株価です。

既に分かっている所に適用するので、卑怯と思われるかもしれません。
しかし、失敗例も載せていますので、決して良いようにデータを取捨選択している訳では無いことを御了承下さい。

実例①2016年 毎月積立投資した場合

日経平均株価2016年 週足 購入タイミング

上のグラフは2016年の日経平均株価のチャートです。赤枠で囲った1~3月は下降トレンドなので、購入を控える期間になります。
それ以外はトレンドとして微妙だったり、上昇なので通常通り積立投資をすることになります。

4月上旬あたりは下降トレンドから上昇トレンドに転換しそうな時期です。実際、リアルタイムでチャートを見れば、まだ下降トレンドが続きそうで悩むところだと思います。
ただ、下降トレンドが少し続いて基準価額も落ちたので、いつもより安く買えたって気持ちで買っちゃいましょう
悩んだら買うぐらいの気持ちを持つ方が気が楽です。

4月~9月までは何とも言えない期間ですが、そういう時はいつも通り買いましょう。
投資で利益を得るためには長く保有することが重要であり、悩んでいる間は機会損失に繋がります。

このように買えば利益がどれくらいになったのか試算しました。
日経平均株価に連動して運用する投資信託の1つ、ニッセイ日経225インデックス投資信託に毎月1万円積立投資をしたとします。
2016年の投資金額は12万円になります。

買付日付 基準価額(円)*1 買付口数
毎月1万円分 年間12万円*2
2016/1/4 19722 50.70 0.00
2016/2/1 19102 52.35 0.00
2016/3/1 17212 58.10 0.00
2016/4/1 17421 57.40 229.61
2016/5/2 17402 57.46 57.46
2016/6/1 18272 54.73 54.73
2016/7/1 16921 59.10 59.10
2016/8/1 17946 55.72 55.72
2016/9/1 18266 54.75 54.75
2016/10/3 18029 55.47 55.47
2016/11/1 18943 52.79 52.79
2016/12/1 20094 49.77 49.77
2016/12/30 資産価値(基準価額20775円) 136770 139066
*1 ニッセイ日経225インデックスファンドの基準価額を基に作成(2018年6月17日)
*2 下降トレンドの時は購入せず、次月にまとめて購入するとする

2016年12万円投資をして、年末には積立投資13.67万円、下降トレンドの時買わなかった場合は13.90万円です。
差額は2千円ちょっとです。利回りは13.9%と15.8%で差は2%になりますので、少し小さいかもしれませんが利益増加に効果があったことが分かります。

事例②リーマンショック前後

それではリーマンショックの時はどうでしょうか。
上記と同様に計算しますが、リーマンショックは長いので2年間の範囲で見てみましょう。

日経平均株価リーマンショック 購入タイミング

先ほどと同様に毎月1回月初めに定額で投資信託を積立します。期間は2007年4月~2009年3月までの2年間24回です。
さらに上の図の通り、2007年8月~2008年3月と2008年7月~2009年3月は積立投資をストップします。ただし、買わなかった分は金額が多いので今後も買い増しはせずに貯金したとします。

先ほどのような計算した過程は示しませんが、2009/3/2時点で定期的に買い続けた場合は資産が57.8%、一方でトレンドを掴んでストップした場合は91.1%と大きく差が出ます。
30%以上の差があるので、数値としては大きいでしょう。

勿論、この2年間だけの話で、そのまま投資信託を持ち続けたり、積立投資の期間が長ければ損失は減ります。
ただ、見方を変えればこれほどの差が出る可能性があるということです。

傾向が微妙だと失敗もある

日経平均株価2017年 週足 購入タイミング

余談ですが、2017年は明確な下降トレンドが無く、題材としては不適でした。
上記グラフのように、ちょっとした下降トレンドとなっている赤枠で買わずに来月に回したと仮定して同様の計算をしたところ、かえってマイナスになりました(-3千円)。
あまり神経質になるとかえって損をすることになることを肝に銘じましょう。

これらの方法は「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書 足立 武志」の本を参考に作成しました。
この本は株の売買に関する内容ですが、売買視点での株や株式会社の知識が身に付きます。私は勉強になりましたので、株を買わない方も読んでおいて損はないかと思います。

最後に 景気は必ず循環するので平常心を

トレンドを掴み損ねて高値で投資信託を買い過ぎ、失敗することもあるでしょう。
そもそも、投資信託は普段からチャートに貼りついて取引しない人向きですので、そういうこともあって当たり前です

ただ、景気は必ず循環することを忘れないでください。知っておいて損は無いので景気サイクルというものを簡単に紹介します。
景気にはサイクルがあり、ある一定の周期で上がったり下がったりすると偉い人が考えたものです。

循環名周期
キチン循環40ヶ月
ジュグラー循環10年
クズネッツ循環20年
コンドラチェフ循環50年

説明は割愛しますが、大事なことは景気は循環するということです。
あまり実感は無いかもしれませんが、日経平均株価を見ると、2009年のリーマンショックから立ち直り、景気が循環していることが分かります(下記グラフ)。
こういうサイクルを知っておくことで、心の準備が出来たり、暴落時も慌てて売ってしまうことを防げるでしょう。

リーマンショックからの回復(日経平均株価)

まとめ

プロでない我々が景気や株価、投資信託の価額を値動きを予測することは出来ません。
しかし、チャートを見て世の中の傾向(トレンド)を掴んで、さすがにタイミングが悪い時期を回避することは可能です。そして、景気は必ず循環するので、暴落しても回復するまで待つことが大事です。
少しでもいいタイミングで売買出来るようになれば幸いです。

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