シャープレシオとは? 計算方法や目安を数式と図を使って解釈しよう

公開日 2017年11月26日
更新日 2019年4月20日
リスクとリターンのイメージ

この記事では、投資をする上で重要な指標であるシャープレシオについて説明します。
シャープレシオは投資信託のような金融商品の投資効率を数値化する重要な指標です。

既に投資をしている方なら使っている人も多いと思います。
ただ、シャープレシオを間違って理解していると投資のリターンやリスクを見誤り、大きな失敗に繋がることになりかねません。

正しく理解するためにシャープレシオの定義や計算方法から理解することが必須になります。
そこで、本記事ではシャープレシオの計算方法や目安を数式と図を使って説明します。

では、さっそく、計算方法について見ていきましょう。
数式を扱うので取っ付きにくいかもしれませんが、お付き合いください。

シャープレシオの計算方法とイメージ解釈

まずはシャープレシオが何を示す数値であるかを簡単にイメージ出来るように説明します。

シャープレシオのイメージ

仮に上記のような2つの値動きをした商品があったとします。
平均リターンは同じとしています。

右の方が乱高下が激しく、リスクがあるものです。
平均リターンは同じですので、左の方が安定した運用が出来ており、優れた商品であることが理解できると思います。

これを数値化したものがシャープレシオです。
左がシャープレシオが大きいもので右が小さいものです。

よって、シャープレシオが大きいほど一般的には優れた商品であることを示しています。

(ファンドの平均リターン-無リスク資産利子率)÷リターンの標準偏差(ばらつき)

ファンドの平均リターンとはいわゆるトータルリターンや利回りに該当します。
無リスク資産利子率とはリスクゼロで得られた利益のことです。シャープレシオはリスクに対するリターンの指標なので、差し引きします。
標準偏差とはデータのバラツキを表す数値のことです。

ここでは、安全資産利子率は一旦無視したシャープレシオ(=リターン÷リターンの標準偏差)について、解釈します。
この標準偏差が聞き慣れない言葉だと思いますので、詳しく説明します。

標準偏差とは

標準偏差とはばらつきを数値化したものです。図でばらつきを表現すると下記のようになります。

リターンのヒストグラムイメージ

上のグラフは一日のリターンを100日分取得し、分布にしたものです。
値が大きい所ほど回数が多いということになります。

左の方が山が緩やかになっていることが見て取れます。これは、右に対し左の方が高いリターンから低いリターンまで幅広くあったことを示しています。
言い換えると左の方がばらつきが大きいことになります。

このように分かりやすいといいのですが、本当のデータはもっと分かりにくく、比較もしにくいです。
そこで、このばらつきを数値化したものが標準偏差です。

標準偏差の解釈

データがx1,x2xnとあり、その平均をμとした場合、標準偏差σは下記数式で表されます。

\sigma ^2= \frac{1}{n} \sum_{k=1}^n (x_k -\mu)^2

データ-平均の二乗の総和がσの2乗です。
これだけでは計算方法は分かっても意味がさっぱりですよね。

しかし、標準偏差σが分かると、データの確率密度分布を出すことが出来ます。

ヒストグラムと正規分布

このσを算出してグラフの右上の式に入れて関数をプロットすると、ヒストグラムの上に乗ります。
勿論完璧に乗るわけでは無いですか、ある程度近似できます。

この関数を正規分布といいます。自然界のデータの分布はこの関数で近似できるとされています。
これが分かると分布の確率を出すことができます。

標準偏差と正規分布

正規分布の確率密度のグラフ

先程の関数は別名で、正規分布の確率密度分布と言われています。
全体を積分すると1になることから、関数の面積が確率を表します。

数式は標準偏差σμによって決まります。
そして、μを中心にσで積分(面積)すると、一定値が算出される点が特徴です。

なんで?ってなる方は計算してみてください。--σ+μ~σ+μの範囲で積分すると0.68になると思います。
計算できない方は受け入れてください。面積=確率を示すので、下記のように言い換えることができます。

データ範囲 確率
-σ~σ 68.2%
-2σ~2σ 95.4%
-3σ~3σ 99.7%

つまり、標準偏差σが分かるとどういった範囲内でデータがバラつくかが分かります。
ここが標準偏差σを理解する上で最も大切なところです。

投資信託での標準偏差

σとか数式を使われると分かりにくいですよね。次は具体的に投資信託の収益率で考えましょう。

ある仮想のファンドにて、リターンの平均が5%、標準偏差が5%となった場合、先ほどのグラフは下記のようになります。

リターン 平均5% 標準偏差10%の時 確率密度のグラフ

簡単に言うと下記のような確率でばらつきます。

リターン 確率
0%~10% 68.2%
-5%~15% 95.4%
-10%~20% 99.7%

なんとなくイメージが出来るようになりましたでしょうか。この標準偏差が大きいほどバラツキ範囲が大きくなり、リスクが大きいということになります。
さらにイメージしやすいようにファンドの基準価額の推移で考えましょう。

時系列で見たリターンの標準偏差イメージ

基準価額(値動き)で見た標準偏差(ばらつき)のイメージは上の図のようになります。
値動きが0%~10%の領域に入っている比率が68.2%になります。

標準偏差の違いによるリターンの推移の違い

標準偏差σが5%の時と10%の時を比較してみましょう。リターンの平均は同一の5%とします。
σが10の時は明らかに曲線が波打っていることが見てとれます。これで標準偏差=ばらつきが理解出来たと思います。

長い目で見ると、平均リターンが同じであるため大差無いですが、標準偏差が10%の方はリターンが部分的に15%超えたりすることもあります。逆もしかりです。標準偏差が大きいと損益も大きくなり、ハイリスクハイリターンになります。

以上で、標準偏差を理解出来ましたね。

シャープレシオの解釈

本題のシャープレシオに戻ります。
繰り返しになりますが、シャープレシオの式は下記の通りです。

(ファンドの平均リターン-無リスク資産利子率)÷リターンの標準偏差(ばらつき)

標準偏差を理解出来れば、シャープレシオは簡単です。
上のシャープレシオの計算式を使って、実際どんな値になるのかを早速見ていきましょう。

パターン① リターンが同じでシャープレシオが異なる場合

無リスク資産利子率を無視した場合、先ほどのリターン5%で同一、標準偏差が5%,10%の時、シャープレシオにすると下記のようになります。

平均リターン 標準偏差シャープレシオ
5% 5%1
5% 10%0.5

計算式に当てはめただけですが、標準偏差(ばらつき)が大きいとシャープレシオの値は小さくなります。
基準価額のグラフにすると以下の通りです。

平均リターン=5% シャープレシオ1 or 0.5 の時の基準価額推移

つまり、シャープレシオが大きいということは、バラツキを抑えたリターンが得られるということです。
基本的には同じリターンを得るならバラツキは小さい方が良く、シャープレシオが高い方が優れていると言えるでしょう。

但し、シャープレシオだけで投資リスクを判断すると間違った商品を選ぶ可能性もあります。
次の例を見てみましょう。

パターン② シャープレシオが同じで平均リターンが異なる場合

同じシャープレシオレシオでも、平均リターンが高いとバラツキ幅は大きくなります。
まずは下記の表をご覧ください。

平均リターン 標準偏差シャープレシオ
5% 5%1
10% 10%1

同じシャープレシオでも、リターンが5%と10%ではバラツキ幅が変わります。
リターンが10%なら標準偏差が10%でも、シャープレシオは1になります。

これをグラフにすると下記のようになります。

シャープレシオ1 平均リターン=5% or 10%の時の基準価額推移

平均リターン10%の方はリターンは高いけど、値動きが激しくリスクがあると思いませんか。

長く保有出来る方ならタイミングを見て売れば問題ありません。
すぐ売る可能性があるなら基準価額が低いときに売ってしまい、大きな損失になりかねません。

いわゆるハイリスクハイリターンとなります。
ハイリスクローリターンではないので、ハイリスクが飲めるなら買って良いですが、リスクを覚悟しなければいけません。

よって、勘違いしてはいけないのは、シャープレシオが高い=ローリスクローリターンではありません。
あくまでリスクに対するリターンの良さを計る指標であり、リターンとセットで考えましょう。

また補足になりますが、シャープレシオは過去の運用結果を示すもので、将来どうなるかは分かりません。
そこだけは頭の片隅に置いておきましょう。

シャープレシオの目安は1以上?

一般的には目安としてシャープレシオは1を超えるものが良いとされています。
当サイトでは投資信託(インデックスファンド)のトータルリターンを5%程度で考えていますので、シャープレシオが1であれば、0%~10%内にいる確率が約70%、-5%~15%内にいる確率は95%になります。

よって、損をしても-5%ぐらいで収まる可能性が高いと考えることが出来ます。
言い換えれば、良い投資信託でもそれぐらいの損失を覚悟しないといけません。

実際、シャープレシオ1以上というのはそこまで困難な目標でも無いようです。

投資信託のシャープレシオ実績

上のグラフをご覧ください。楽天証券の取り扱う投資信託のみのデータですが、シャープレシオ1以上はある程度の割合を示したグラフになります。
1年の場合、最近株価が伸びている状況(2017年11月)なので、順調でありバラツキも少なくリターンを得られているのでしょう。
5年という長期間で見ても、過半数以上はシャープレシオが1以上です。見る時期が悪ければ3年のようにシャープレシオが悪い時もありますが、それでもシャープレシオ1以上というのは無理な数値では無いことが分かると思います。

よって、シャープレシオ1以上は妥当な判断材料になりうると判断します。

当サイトでも投資信託を選ぶ時はシャープレシオを1以上を目安にと書いています。
詳しくは下記記事をご覧ください。

まとめ

(ファンドの平均リターン-無リスク資産利子率)÷リターンの標準偏差(ばらつき)

シャープレシオとは投資のリスク(ばらつき)に対するリターンの大きさを示す指標です。
リターンが同じであり、シャープレシオが大きければリスクが小さくなります。
シャープレシオだけで判断するのは間違いですが、効率的な資産運用をするなら、シャープレシオを1以上を目安に選びましょう。

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シャープレシオを理解した今、インフォメーションレシオも簡単に理解出来ると思いますので、下記記事も合わせてご覧ください。

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おすすめの証券会社も紹介していますので、参考にしてください。

当サイトのおすすめ投資信託もご紹介しています。
インデックスファンド中心のため、シャープレシオは使用していませんが、参考になると思います。